【油の捨てかた】固める?吸わす?広げたい資源としての価値

揚げ物をした後の油、どう処理していますか?
「排水口に流しちゃダメって聞くけど、結局どうしたらいいの?」そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
油の処理が面倒で放置してしまうと、環境への影響や排水管の詰まりなど、さまざまな問題が発生します。
この記事では、家庭でできる適切な油の処理方法から、バイオ燃料へリサイクルという新しい選択肢まで、分かりやすく解説します。
油は何ゴミ?まずは基本の捨て方

自治体によって、油の分別方法は異なります。以下に、主要な自治体の分別区分をまとめました。
自治体名 | 分別区分 | 備考 |
---|---|---|
東京都23区 | 可燃ごみ | 固めるか、紙などに吸わせて処理 |
大阪市 | 可燃ごみ | 同上 |
名古屋市 | 可燃ごみ | 同上 |
京都市 | 拠点回収 | 原則として拠点回収、他市同様可燃ごみでも可 |
川崎市 | 可燃ごみ(リサイクル回収あり) | 一部地域で使用済み油の資源回収を実施 |
※詳細は各自治体のホームページをご確認ください。
なぜ油は「可燃ごみ」なのか?

油は液体であり、可燃性が高いため、多くの自治体では「可燃ごみ」として処理されています。
しかし、液体のままでは処理施設での焼却が難しく、固めるか吸わせることで処理しやすくなります。
また、誤って流出したしまった場合に発生するトラブル(下水の詰まり、悪臭、河川汚染)を防ぐためにも、固める・吸わせるといった処理方法が推奨されています。
基本の処理方法
家庭で出る使用済みの食用油は、量が少なくても適切な処理が必要です。
ここでは、家庭で実践しやすい代表的な処理方法を紹介します。
固める

市販の油凝固剤(例:「油を固めてポイ」など)を使って、油をゼリー状に固めます。
完全に冷ましてから、ごみ袋に入れて可燃ごみへ。100円ショップやスーパーでも購入き、手軽で衛生的です。
揚げ物を頻繁にするご家庭や、処理が苦手な方には特におすすめです。
吸わせる

新聞紙、ボロ布、キッチンペーパー、オイル吸収パッドなどに吸わせる方法。少量の油であれば、紙パック容器に吸収素材を入れて注ぐと処理が簡単です。
使用後は、口をしっかり閉じて漏れを防ぎましょう。
市販の「油吸収パッド」はニオイや手間を抑えたい方に便利です。
牛乳パック処理
内側が防水加工された牛乳パックに新聞紙や布を詰めて油を注ぎ、口をしっかりテープで閉じて可燃ごみに出す方法もおすすめです。
特に大量の油を処理したいときに便利です。折りたたんで密封すれば、漏れやニオイの心配も減ります。
排水口への流し捨てがNGな理由

油を排水口に流すと、排水管の内側に付着して徐々に固まり、詰まりの原因となります。
これにより、排水が逆流したり、シンクから悪臭が発生するなど、家庭内でのトラブルが発生しやすくなります。
また、油分が混じった生活排水は、下水処理場での処理を難しくし、処理コストの増大や設備の負荷を招きます。
家庭での安易な流し捨てが、社会全体のインフラに悪影響を及ぼしているのです。
さらに問題なのは、もし油が河川などに流出してしまうと生態系や環境に悪影響を与えることです。
特に、てんぷら油などの使用済み油は、1リットルで約1,000トンの水を汚染するともいわれており、環境へのダメージは極めて深刻です。
些細な行動が大きな環境リスクにつながるため、排水口に油を流すことは絶対に避けるべきです。今一度、自分の台所から始める「小さな意識改革」を心がけましょう。
新たな選択肢~バイオ燃料という未来への一歩~

実は使用済みの食用油は、バイオディーゼル燃料(BDF)として再利用することが可能です。
一部の自治体でも、使用済みの食用油を拠点回収しバイオ燃料として活用する取り組みが広がっています。
ここでは、地域で実施されている注目の回収プロジェクトを紹介します。
京都市の事例:回収してバイオディーゼル→市バスへ
京都市では、家庭から出された使用済み天ぷら油を回収し、市内のごみ収集車や市バスの燃料として再利用する取り組みを続けています。
令和6年度の回収量は約11.9万リットル。
油が街中を走るバスのエネルギーに生まれ変わる、地域内循環の好例です。
▶︎参考https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/cmsfiles/contents/0000061/61897/chirashi.pdf
油~モアプロジェクト(愛媛県)
愛媛県では株式会社ダイキアクシスを中心に「油~モアプロジェクト」として、家庭や飲食店から出る使用済み油を回収し、バイオ燃料「D・OiL」に精製。
県内の公共バスや収集車の燃料として活用されています。
DCMなどのホームセンターを回収拠点にしており、参加のハードルも低く設計されています。
▶︎参考:https://www.daiki-axis.com/d-oil/
回収の基本スタイル
冷ました油をペットボトルなどの密閉容器に入れ、指定された回収拠点へ持参するのが一般的です。
蓋がしっかり閉まっていれば液体のままでも問題ありません。
身近なスーパーや市役所などに設置されていることもあるため、気軽に取り組むことができます。
こうした取り組みに参加することで、油を単なる「ごみ」ではなく、次のエネルギーにつなげる一歩となります。
回収された油はどうなる?
では、回収された油は具体的にどのような流れで資源化されるのでしょうか?
以下は、家庭から出た油がバイオ燃料に生まれ変わるまでのおおまかな流れです。
- 回収
- 使い終えた油を冷まし、ペットボトルなどの密閉容器に入れて回収拠点に持ち込みます。
- ろ過・洗浄
- 油に混ざったカスや水分、不純物を取り除く処理が行われます。
- 燃料への加工
- きれいになった油を専用の設備で加工し、軽油の代わりに使えるバイオ燃料に生まれ変わらせます。
- 地域で活用
- 完成したバイオ燃料は、ごみ収集車や路線バス、発電機などで実際に使われています。
活用事例①:バイオディーゼル(BDF)
完成したバイオディーゼル燃料は、バスやごみ収集車、農業機械などの燃料として使用されます。
たとえば、京都市や愛媛県では、地域で回収された油をそのまま地域の公共インフラを支える燃料として再活用する、地産地消型の資源循環が行われています。
活用事例②:バイオジェット燃料(SAF)
さらに近年では、回収した使用済み食用油を、航空機向けのバイオジェット燃料(SAF=Sustainable Aviation Fuel)へと変換する取り組みも進んでいます。
SAFの製造には高度な技術と設備が必要ですが、大手小売企業や製油会社が連携し、家庭から出る油を航空燃料へと生まれ変わらせるプロジェクトが始まっています。
地上と空の両方で、私たちの使い終えた油が未来の移動を支えるエネルギーに変わる──そんな時代が少しずつ、現実になりつつあるのです。
油の選び方・使い方でできること
使用済み油の処理を減らすためには、「そもそもムダな油を出さない」ことが大切です。
最後に、油の選び方や使い方の工夫を通じてよりサステナブルな家庭の台所をつくるヒントをご紹介します。
繰り返し使える油の選び方

- 酸化しにくい油を選ぶ
- オリーブオイルやキャノーラ油は酸化しにくく、再利用しやすい傾向があります。
- オイルポッド等で保管し再利用することができます。
- 少量パックで購入
- 使い切れる量をこまめに買うことで、保存中の劣化やムダを防げます。
- 環境配慮型の油を選ぶ
- RSPO認証のパーム油や、国産菜種油なども選択肢の一つです。
こうした工夫を日常に取り入れることで、油の廃棄量を減らすだけでなく、手間やコストの削減にもつながります。
未来の資源循環にやさしい選択肢を、台所からはじめてみませんか?
おすすめアイテム
- 油ろ過ポット:不純物を除いて再利用しやすく。
- 使い捨て吸収パッド:少量の油処理に便利。
- 油凝固剤:揚げ物後の処理に手間がかからず安心。



まとめ:適切に処理して、未来につなげる一歩を
食用油は、正しく処理することで「ごみ」ではなく「資源」に変わります。
凝固剤や新聞紙での処理はもちろん、地域の回収プログラムを活用すれば、私たちが日々使う油が公共交通や航空機を動かすエネルギーに生まれ変わります。
環境への配慮は、ほんの少しの工夫から始められるので、できることからひとつずつ始めてみませんか?