【埋め立て処分の向こう側】最終処分場で何が起きている?

埋め立て処分場は、日常ではほとんど目にしない施設です。
現地で見れば、海沿いでは区画が整然と並び、山あいでは谷の形に沿って排水路やガス抜き管が配置されています。
どちらも目的は同じ——水とガスを制御し、最後に残ったものを安全に受け止めること。
この記事は、最終処分場のしくみを3つの視点(①水を守る ②安全と静けさを保つ ③閉めたあとも見守る)で丁寧に整理します。
普段は気に留めない最終処分場に視線を向けてもらい、ゴミ処理の全体像理解を助ける一助となれば幸いです。
目にする機会が少ない施設だからこそ、まずは“こういう仕組みで守っている”を知ることが大切です。
埋め立ては焼却や資源化のあと、最後に残るものを受け止める唯一無二の仕組みの全体像への第一歩になります。

埋め立ての位置づけ(まず全体像)
埋め立て施設をひとことで表すと、“燃やす/資源化しても残る分”を外に漏らさず、静かに安全にしまっておく場所です。
最終処分場の役割
“何でも捨てる場所”ではありません。焼却や資源化のあとに残ったものだけを受け止める最後の受け皿です。
日本は焼却先行のため、直接埋め立ては1%未満が基本傾向です。
全体の道筋:家庭 → 収集 → 焼却/資源化 → 残ったもの(残渣・灰) → 最終処分場
実際に搬入されるものの例
実際にどんなものが最終処分されるのかというと、こんな感じです。
- 焼却主灰
- 燃やした後に残る灰(性状を整えて受入)。
- 飛灰
- ばいじん等。薬剤処理や固化で基準適合にしてから受入。
- 破砕・選別の残渣
- 粗大ごみ処理や選別後に取り切れなかった混合残さ。
- 埋め立て適合の不燃物
- 陶磁器・ガラス・石など(自治体で運用差あり)。
- 例外的な直接搬入
- 災害廃棄物など一時的な事情で増減あり。
最終処分場の“3つの視点”
最終処分場の機能は大きく“3つの視点”で説明できます。
この3つを押さえると、現地で見える設備の意味が自然に理解できます。
- 水を守る(外へ出さない/整えて返す)
- 埋め立て層の水や溶出成分を地下水・土壌に出さない(遮水)。
- さらに場内で浸出水を集めて処理し、基準内の水質で放流します。
- 安全と静けさを保つ(ガスと露出の制御)
- ガスは抜き・燃やし・必要に応じて利用して膨れ・火災・臭気を防止。
- 小区画(セル)単位で敷き均し→転圧→日覆土を繰り返し、飛散・害獣を抑え作業を安全にします。
- 閉めたあとも見守る(後期管理)
- 埋め立て終了後も水・ガス・沈下を監視し、跡地利用の安全性を確認。
- 段階的に緑地・公園などへ転用します。
現地イメージで理解する(海面/山間部)
具体的にイメージするために、この3つの視点(1.水を守る 2.安全と静けさ 3.閉めたあとも見守る)が立地ごとにどう現れるかを2つの実例で見てみます。
A:東京湾の海面管理型
B:山間部の谷埋め型
地形は異なっても基本的な考え方は同じです。
A|東京湾の海面管理型(中央防波堤外側/新海面B)
- 役割
- 23区の最後の受け皿
- 地形×5点セット
- 海と遮断し多重遮水。
- 内部の雨は浸出水として場内処理。
- セル運用で日覆土、ガス抜き管と沈下管理。
- 延命の工夫
- 焼却灰の資源利用(セメント原料化・溶融スラグ)で最終処分量を削減。
- 見学受け入れもあり学びの場にも
関西万博が開催されている大阪の夢洲も埋め立て造成の人工島です。

B|山間部の「谷埋め型」管理型(イメージ)
- 役割
- 地域の残渣の受け皿。
- 地形×5点セット
- 谷口に堰堤、側壁・底面にライナー。
- 表面排水と浸出水を徹底分離。
- セル運用+飛散・獣害対策。閉鎖後はモニタリング→緑地化。
こうして理解してから臨海地域の埋め立て地を見ると、少し見え方が変わっていませんか?

数字でみる日本のいま
仕組みの次は、いま日本がどの地点にいるのかを数字でざっくり把握しましょう。
「どれくらい余裕がある?」「私たちの行動は効いている?」を確認するための、生活目線のシンプルな指標だけを取り上げます。
現状とトレンド(最新公表年ベースの概況)
埋め立て施設の現状
- 直接埋め立ては1%未満(焼却・資源化が先行)
- 残余容量:約9,500万m³/残余年数:約25年(全国平均、年度により増減)
- 処分場数は減少傾向だが、広域化・資源化・灰の資源利用で延命が進む
近年の傾向は?
- 処分場数:長期には緩やかに減少。
- 残余年数:20〜25年の帯で上下しながら横ばいに近い推移。
- 直接埋め立て率:低位で安定(焼却先行の日本の構造)。
ここがポイント:『直接埋め立て1%未満』を支えるもの
- 焼却先行の運用
- 衛生確保と減容で、埋める量を最小化。
- 分別・選別の精度
- 資源ごみの回収・選別が残渣を圧縮。
- 灰の資源利用
- 主灰・飛灰のセメント原料化/溶融スラグ利用などで最終処分量を削減。
- 広域連携
- 施設間の役割分担で効率的に処理し、埋め立てへの流入を抑える。
何が数字を動かす?
- 資源化の向上
- 容器包装や金属・古紙の回収精度が上がる→最終処分量が減り、残余年数は伸びやすい。
- 灰の資源利用
- 焼却灰のセメント原料化・溶融スラグ利用→最終処分量の削減。
- 施設の新設・拡張
- 容量が増える→残余年数は一時的に伸びる。
- 排出量変動
- 人口動態・観光・産業構造、災害廃棄物の発生など→年ごとのブレが生じる。
「残余年数」の考え方
ニュースで聞く「残余年数○年」は、“今のペースならあと何年もつか”という推計です。
細かい式は脇に置き、ポイントだけかいつまんでまとめます。
- 伸ばすレバーは2つ
- ①受け入れを減らす(資源化・灰の資源利用・減量)
- ②容量を増やす(新設・拡張)。
- 読み方のコツ
- 全国平均は目安。地域事情で上下します
- 伸び=改善とは限らない(新設の影響)
- 縮み=悪化とも限らない(一時要因)。
- ざっくり計算の感覚
- 残る容量 ÷ 1年に埋める量 ≈ 年数。
- ここが小さくなるほど寿命は延びます。
- 見るべきはトレンド
- 単年より3〜5年の流れと、自治体の資源化や広域連携の取り組み。
埋め立てを減らす“3つ”の視点
数字と仕組みが見えたら、あとはできるときに、できる分だけ行動を変えるだけ。
手間は増やさず、埋め立てを減らす効果が大きい3つに絞ります。
- 電池・ライター・スプレー缶は別ルート
- これだけで火災や停止リスクが遠のき、処理全体の流れが守られます。
- 資源の“ひと拭き・水切り”
- わずかな手間で資源化の歩留まりが上がり、最終処分場に回る残渣が少なくなります。
- 粗大ごみは適正ルート(予約収集・持込・民間回収)
- 破砕・選別の効率が上がり、最後の受け皿を長持ちさせます。
まとめ
埋め立て処分場は、焼却・資源化のあとに残るものを安全に受け止める最後の受け皿です。
日本は直接埋め立てが全国平均1%未満。
これは焼却・資源化・灰の資源利用・広域連携が支えている結果です。数字は単年ではなく流れで読み、地域差に注意しましょう。
私たちにできることは危険物を混ぜない/資源は中身を出して軽くすすぎ水切り/まず使い切るの3つ。
小さな積み重ねが資源循環を強め、最終処分量を減らします。
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