【缶の向こう側】アルミ缶とスチール缶は何になる?金属がもう一度原料に戻るまで
飲み終わったアルミ缶やスチール缶。
中身がなくなれば「空き缶」ですが、中に使われている金属まで役目を終えたわけではありません。
回収された缶は、そのあとどうなるのでしょうか?
ジュースやコーヒー、ビール、缶詰など、私たちの身近なところで使われている「缶」。
使い終わったあとは、自治体などのルールに従って資源として回収されます。
でも、ひとことで「缶」といっても、実は同じ素材ではありません。
- アルミ缶
- スチール缶
見た目は似ていますが、それぞれアルミニウムと鉄を主体とする別の金属からつくられています。
では、違う金属なのに、なぜ同じ「缶」として集められることがあるのでしょうか。
そして、回収された缶はどうやって金属へ戻り、何に生まれ変わるのでしょうか。
その向こう側を追いかけてみると、金属リサイクルならではの面白さが見えてきます。
今回は、空になった缶の中に残っている、「金属という資源」を追いかけてみましょう。
「缶」は、一つの素材ではない
普段はまとめて「空き缶」と呼んでいますが、飲料缶などには大きく分けてアルミ缶とスチール缶があります。
アルミ缶
主にアルミニウムを使った缶です。
軽く、さびにくく、加工しやすいという特徴があり、飲料容器などで広く使われています。
スチール缶
主に鉄を使った缶です。
強度があり、飲料缶だけでなく食品用の缶詰などにも使われています。
つまり、
「缶」は製品としての分類であって、素材の名前ではない
ということです。
ここが、缶の向こう側を理解する最初のポイントです。
でも、違う金属なら最初からアルミ缶とスチール缶を分けて出さないとダメなんじゃないの?

自治体によって分別方法は異なりますが、アルミ缶とスチール缶をまとめて回収している地域もあります。
それができる理由の一つが、金属それぞれの性質を利用した選別です。
そもそも、なぜ家庭で分別するの?

回収された缶は、どうやって金属に戻る?
家庭などから回収された缶は、そのまま溶かされるわけではありません。
異物を取り除き、素材ごとに選別して、再びものづくりに使える金属原料へ戻していきます。
まずは異物を取り除く
回収されたものの中に、対象ではないごみなどが混ざっていれば取り除きます。
資源として利用するためには、まず「次の工程へ渡せる状態」にする必要があります。
アルミとスチールを分ける
ここで活躍するのが、金属の性質です。
鉄を主体とするスチール缶は、磁石にくっつきます。
この性質を利用すれば、磁力によってスチール缶を選び出すことができます。
一方、アルミ缶は鉄のようには磁石にくっつきません。
施設によっては、磁力選別など複数の選別方法を組み合わせながら、異なる素材を分けていきます。
分けた資源ごみは、そのあとどうなる?

運びやすい形にまとめる
選別された缶は、圧縮してまとめられることがあります。
かさばる缶を小さくまとめることで、その後の保管や運搬をしやすくします。
実際、スチール缶リサイクル協会の調査では、施設へ持ち込まれたスチール缶の85.3%がブロック状にプレス加工されています。
再び金属の原料へ
選別されたアルミやスチールは、それぞれの再生工程へ送られます。
そこで溶解などの工程を経て、再びものづくりに使える金属へ。
ここから、アルミと鉄では少し違った旅が始まります。
💡 缶の豆知識|スチールは磁石で選別?
本当に「磁石」でスチール缶を分けているの?

実際に、磁力は資源選別の現場で活躍しています。
スチール缶リサイクル協会の2024年度調査では、スチール缶の選別方法として「磁選+手選別」が52.0%、「磁選のみ」が30.6%でした。
合わせると、8割を超えます。
一見すると複雑そうな資源選別ですが、「鉄は磁石にくっつく」というシンプルな素材の性質も、今なお重要な選別技術として使われているのです。
💡 缶の豆知識|アルミはどうやって選別?
では、磁石にくっつかないアルミはどうやって機械で分けるの?

アルミは鉄のようには磁石にくっつきません。
そこで選別施設では、「渦電流選別」と呼ばれる仕組みが使われることがあります。
変化する磁場によってアルミなどの非鉄金属に電流を発生させ、その反発力を利用してほかのものから選別します。
「磁石にくっつくか」だけではなく、素材が持つ物理的な性質そのものを利用して資源を選び出しているのです。
アルミ缶は、なぜ「リサイクルの優等生」と呼ばれる?
アルミ缶の向こう側で、ぜひ知っておきたいのがエネルギーの話です。
アルミニウムの原料となるボーキサイトから新しいアルミ地金をつくるためには、多くの電力が必要です。
一方、一度つくられたアルミニウムを回収し、再生して利用する場合は、新しく地金をつくる場合よりも大幅に少ないエネルギーで済みます。
アルミ缶リサイクル協会では、回収されたアルミ缶から再生地金をつくる場合に必要なエネルギーは、ボーキサイトから新しい地金をつくる場合の約3%としています。
つまり、約97%ものエネルギーを節約できる計算です。
さらに、2024年度の国内のアルミ缶リサイクル率は99.8%でした。
アルミ缶を回収するということは、アルミという金属だけでなく、その金属を一からつくるために必要な大きなエネルギーを節約することにもつながるのです。
「アルミ缶はリサイクルしましょう」と聞くだけでは、なかなか見えてこない部分かもしれません。
でも、その缶を一からつくるところまでさかのぼって考えると、回収する意味が少し違って見えてきます。
アルミ缶は、もう一度アルミ缶になれる
回収されたアルミ缶の代表的な行き先の一つが、再びアルミ缶になる「CAN to CAN(缶から缶へ)」です。
使い終わったアルミ缶を回収する。
- 選別する
- 再生地金へ戻す
- そして、再びアルミ缶をつくる
缶 → 金属原料 → 缶
という循環です。
2024年度には、国内で再生利用された使用済みアルミ缶のうち、75.7%が再び缶材として利用されました。
ここで面白いのが、
リサイクル率99.8%
と、
CAN to CAN率75.7%
は、同じ数字ではないということです。
前者は、使い終わったアルミ缶がどれだけ再生利用されたか。
後者は、国内で再生利用されたアルミ缶のうち、どれだけが再び「缶材」に戻ったかを示しています。
つまり、「リサイクルされたか」だけでなく、
その素材が、次に何になったのか。
そこまで見ることで、資源循環の姿がより具体的に見えてきます。
PETボトルで見てきた「ボトルtoボトル」と同じように、アルミ缶にも「缶から缶へ」という循環があるのです。
スチール缶は、大きな「鉄の循環」へ戻る
では、スチール缶はどうでしょうか。
スチール缶の主な素材である鉄も、回収して再び鉄鋼製品の原料として利用できる金属です。
スチール缶リサイクル協会によると、2024年度のスチール缶リサイクル率は94.4%。
90%以上のリサイクル率を14年連続で維持しています。
2024年度には約29.3万トンのスチール缶が国内で消費され、そのうち約94.4%が再資源化されたと算出されています。
回収されたスチール缶は、鉄スクラップとして製鉄所などへ運ばれ、再び鉄鋼製品の原料として利用されます。
そして、その行き先は必ずしも「次のスチール缶」とは限りません。
自動車。
家電。
鉄道や船舶。
ビルや橋などの建設資材。
そして、新しいスチール缶。
さまざまな鉄鋼製品へ生まれ変わることができます。
ここはアルミ缶との違いとして面白いところです。
アルミ缶では「CAN to CAN」という循環が分かりやすく見えます。
一方、スチール缶では、
缶だった鉄が、社会で使われる大きな鉄資源の循環へ戻っていく。
そんなイメージです。
さらに鉄スクラップから鉄をつくる場合、天然資源からつくる場合と比べて、エネルギー消費量を約70%削減できるとスチール缶リサイクル協会は紹介しています。
アルミほど極端ではありませんが、鉄でも「一度つくった金属をもう一度使う」ことには大きな意味があります。
💡 缶の豆知識|どっちがリサイクルしやすい?
アルミ缶とスチール缶、どっちの方がリサイクルしやすいの?

単純に「どちらが上」と比べるものではありません。
アルミは、再生することで新しい地金をつくる場合と比べて大幅にエネルギーを節約でき、缶から缶への水平リサイクルも行われています。
一方、鉄には社会全体に大きな鉄スクラップの循環があり、回収されたスチール缶もさまざまな鉄鋼製品の原料として利用できます。
大切なのは、
アルミにはアルミの循環があり、鉄には鉄の循環がある
ということ。
「缶」という同じ形をしていても、その向こう側では違った資源循環が動いています。
スプレー缶やカセットボンベは、同じ「缶」と考えない
ここで一つ注意したいのが、スプレー缶やカセットボンベです。
見た目は同じ金属製の「缶」ですが、飲料缶や缶詰などと同じ感覚で出してはいけません。
中に可燃性のガスなどが残っている可能性があり、収集や処理の途中で火災や爆発につながる危険があるためです。
自治体によっては、飲料缶などとは別の回収方法を定めています。
そのため、必ずお住まいの自治体のルールに従ってください。
▶︎スプレー缶の正しい捨てかた

▶︎ガス缶・カセットボンベの正しい捨てかた

ここでは安全な捨て方そのものには深入りしません。
大切なのは、
同じ金属製の容器でも、中身や用途によって回収ルートが違うことがある
ということです。
回収ボックスも、資源循環への入口
缶は自治体の資源回収だけでなく、自動販売機の横などに設置された回収ボックスから集められることもあります。
こうした容器も、事業者などの回収ルートを通じて選別・リサイクルへつながっていきます。
ただし、ここで困るのが、回収対象ではないごみの混入です。
自販機の横にある箱って、ごみ箱じゃないの?

多くは、飲料容器を回収するための回収ボックスです。
飲み終わった缶やペットボトルを入れるための場所で、一般のごみを捨てるためのごみ箱とは役割が違います。
異物が増えれば、その後の選別にも負担がかかります。
自治体回収でも、民間の回収ボックスでも、
「何を回収するための場所なのか」を確認して使う。
それも、資源を次へつなぐ小さな協力です。
家庭でできることは、やっぱり「正しく渡す」こと
アルミ缶もスチール缶も、その向こう側では選別や再生の技術が使われています。
でも、その入口にあるのは家庭や街中での回収です。
難しいことをする必要はありません。
- 中身を空にする
- 自治体などが示す方法に従って出す
- 回収対象ではないものを混ぜない
- スプレー缶など、別の出し方が必要なものは分ける
一つひとつは、小さな行動です。
そのあとには、
- 収集する
- 異物を取り除く
- アルミとスチールを分ける
- 圧縮する
- 溶かす
- 金属原料へ戻す
- そして、新しい製品をつくる
という長い工程があります。
家庭での分別は、その一番最初にあります。
空になった缶は、「中身がなくなった容器」です。
でも、そこに使われている金属の価値までなくなったわけではありません。
正しい回収へ渡すことで、アルミや鉄は次のものづくりへ向かうことができます。
まとめ|空き缶には、まだ「金属」が残っている
飲み終わったアルミ缶。
使い終わったスチール缶。
中身がなくなれば、私たちにとっては「空き缶」です。
でも、その中に使われているアルミニウムや鉄まで、役目を終えたわけではありません。
- 回収する
- 異物を取り除く
- 素材ごとに選別する
- 再び金属原料へ戻す
- そして、新しい製品をつくる
こうした工程を通じて、缶に使われていた金属は次のものづくりへ渡されます。
2024年度のリサイクル率は、アルミ缶が99.8%、スチール缶が94.4%。
高い数字の背景には、家庭での分別から、収集、選別、再生、そして再び製品をつくるところまで、多くの工程があります。
だから、缶を分別する。
それは単に「ごみを種類ごとに分ける」だけではありません。
一度つくった金属を捨てずに、もう一度ものづくりの原料へ渡すことでもあります。
次に空き缶を手にしたとき、
「これはもう空だから、ごみ」
ではなく、
「中身は空でも、素材はまだ使える」
そんなふうに、その向こう側を少し思い浮かべてみてください。
ほかの「素材の向こう側」ものぞいてみる
缶では、アルミと鉄という異なる金属が、それぞれの特徴を活かしながら資源として循環していました。
でも、素材が変われば、循環の仕方も変わります。
PETボトルは、どうやって再びボトルへ戻るのでしょうか。
ガラスびんは、なぜ色ごとに分ける必要があるのでしょうか。
紙は、何度でも新しい紙へ戻せるのでしょうか。
さまざまな種類があるプラスチックはどうでしょう。
素材ごとに、それぞれ違った「向こう側」があります。
気になる素材から、その旅をのぞいてみてください。
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