【小型家電回収の向こう側】回収ボックスの意味と処理フロー、注意点まで

使わなくなったスマホ、ドライヤー、ゲーム機……。
私たちが「小型家電」を分けて出す意味は、都市鉱山=埋もれた金属資源を国内で循環させることにあります。
2013年施行の「小型家電リサイクル法」により、自治体と国の認定事業者が回収・再資源化の要を担っています。
小型家電は“燃える/燃えない”で出すより、回収ボックスへ。
資源の歩留まりも安全性も段違いです。

小型家電リサイクルの基本ルール
まず「何が小型家電で、どの法令に沿って、どこへ出すのか」を押さえると迷いが激減します。
例外(家電4品目・PC)は必ず別ルートになるため、最初に整理しておきましょう。
- 対象と制度
- 対象は「一般消費者が日常で使う電気・電子機器」のうち、政令で指定された28類型
- (※テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機等の家電4品目は別法=家電リサイクル法)。
- 制度は、環境・経産両大臣の基本方針と、国が認定する再資源化事業計画(認定事業者)を軸に運用されます。
- どこへ出す?
- 多くの自治体が回収ボックスや拠点回収を実施。
- 国の認定事業者による宅配回収(例:リネットジャパン)も全国で展開。
- PCは別ルートが基本
- 家庭用パソコンは「資源有効利用促進法」に基づきメーカー回収(PCリサイクルマーク)が原則。
- 申し込み〜集荷まで共通スキームがあります。
分別の注意点:現場が困る“あるある”
正しいつもりで出しても、現場では“困った混入”が頻発します。
火災や回収停止につながるポイントを先に知って、事故や手戻りを予防しましょう。
- 充電式電池は必ず外す
- リチウムイオン電池は発火リスクが高く、施設火災の一因。
- 充電式電池はJBRCルートで別回収へ。
- 個人情報の消去
- スマホ・PC・ストレージ機器はデータ消去を。
- 認定事業者側も保管・破壊の基準を持つのが通常です。
- 家電4品目はボックス厳禁
- テレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機は家電リサイクル法の専用ルート・料金体系へ。
ゴミ箱の向こう側:処理フローを可視化
回収ボックスに入ったあと、小型家電はどんな工程を経て資源に生まれ変わるのか。
ルートから分解・選別・製錬まで、流れを「可視化」します。
集め方の全体像
最初のカギは「どう集めるか」です。
自治体の回収と認定事業者の回収(小売・宅配)の2本立てで、適正処理と資源回収の効率を高めます。
- ルートは大きく自治体回収(ボックス/ステーション等)と、認定事業者の直接回収(小売・宅配等)。
- 集めた小型家電は認定事業者や委託先に渡り、前処理へ。
前処理:手解体 → 破砕 → 選別
安全と回収効率の要が前処理です。
危険物の除去と素材ごとの分離で、次工程(製錬・再資源化)の歩留まりが決まります。
バッテリー・液晶・水銀含有部品などを安全に抜き取り。
個人情報媒体は物理破壊の運用。
磁選(鉄)・渦電流(アルミ)・比重/風力選別などで金属・樹脂・基板に分ける。
基板等は銅製錬等で貴金属回収、鉄・アルミは素材として循環。
樹脂は材リサイクルまたは熱回収(施設・品目により異なる)。
スマホ1台にも金・銀・銅・レアメタルと都市鉱山は身近に眠っています。

何がリサイクルできる?できない?
金属は比較的回りやすく、複合材や混合プラは難易度が上がります。
“何が得意で何が苦手か”を理解すると、家庭での分別行動につながります。
- できる例:
- 鉄・アルミ・銅、基板中の金・銀・パラジウムなどの金属類。
- 難しい例:
- 多種混合のプラスチックや難分離の複合材は、材リサイクルが限定的で熱回収に回ることも。
データで見る“向こう側”
制度は“数字”で改善点が見えてきます。
回収量の推移や目標との差分をチェックし、私たちの協力がどこに効くかを把握しましょう。
- 回収量の現状:
- 例)令和5年度の小型家電回収量は約8.6万トン。
- 制度目標(令和5年度14万トン/年)に届かず、増強が課題。
回収ボックスの賢い使い方
回収ボックスは正しく使うことで効果を発揮します。
投入前のひと手間と、迷ったときの判断軸を持っておきましょう。
ここが成功の分かれ目
発火・データ漏えい・詰まりを防ぎ、資源の質を落とさないためのチェックです。
- 電式電池は外す → JBRC回収へ
- データ消去(スマホ・タブレット・HDD/SSD類)
- ケーブル類は束ねる(投入口の詰まり防止)
- 重量・サイズが大きいものは自治体の粗大系ルートへ
- PCはメーカー回収(PCリサイクルマーク等)
どれに出す?迷わないためのチェックリスト
迷ったときは“例外を先に除外”すると判断が早くなります(PC・家電4品目・電池)
- PC? → メーカー回収(PC3R)へ。
- 家電4品目? → 家電リサイクル法ルートへ。
- 充電式電池が外れる? → 外してJBRCへ+本体は回収ボックス。
- 外れないバッテリー内蔵? → 自治体指示に従い、小型家電回収の指定方法で。
そもそも論:なぜ回収?
回収量を増やすことには、資源・環境・安全・経済の各面で明確な意味があります。
その上で、家庭で何をすべきかまで落とし込みます。
意義と効果
資源確保と産業競争力
小型家電には金・銀・銅・パラジウムなどの有価金属が含まれます。
国内で安定的に回収・供給できれば、輸入依存や価格変動への脆弱性を下げ、製錬・素材産業の競争力維持にも寄与します。
最終処分場・焼却施設の負荷軽減
金属類や電池が可燃ごみに混入すると、焼却効率の低下や設備損傷、発火事故の原因になります。
回収量が増えるほど、埋立容量の節約と運転リスクの低減につながります。
有害物質の適正管理
古い機器には水銀・鉛などの有害物質が使われている場合があります。
適正な前処理・無害化を経て流出を防ぐためにも、専門ルートへの回収が不可欠です。
海外の不適正リサイクル抑止
未整備な地域への輸出や野積み・酸洗いなどの不適正処理は環境・健康被害を招きます。
国内の適正ルートに誘導することが、リスクの外部化を防ぐ実効策になります。
地域経済への波及
拠点回収→前処理→製錬というバリューチェーンは、地域の雇用・技術の受け皿になります。
自治体コストの抑制や、循環の担い手育成にもつながります。
市民が参加しやすい仕組み
回収ボックスは、家庭から最も短い導線で循環に参加できる仕組みです。
身近な行動が成果に直結するため、継続的な参加を促しやすいのも利点です。
なお、東京2020大会では小型家電由来の金属で全メダルが製作され、参加の成果が具体的に可視化されました。
家庭での実践メモ
家庭での基本行動(3点)
- 回収ボックス優先(家電4品目・PCは除外)
- 電池の分離と適切回収(JBRC等)
- データ消去と付属品の整理(ケーブルは束ねる)
迷ったときの原則
- 例外(PC・家電4品目・電池)を先に除外
- 自治体の「小型家電」ページで確認
- 認定事業者の宅配回収を活用
運用継続のコツ
投入口サイズに合う“回収待ちボックス”を自宅に用意し、月1回の持ち出し日を家族で決めておくと運用が安定します。

出典情報
迷ったときや詳しく知りたいときは、まず一次情報(公式情報)を。
今回記事作成のために参照したページをまとめました。
- 環境省|小型家電リサイクル(概要・制度)
- 経済産業省|制度概要
- 経済産業省|家庭系パソコンの回収方法(PCリサイクルマーク)
- PC3R協会
- 充電式電池(JBRC公式)
- 安全情報(東京消防庁)
関連記事




