【充電式バッテリーの向こう側】回収ボックスと専用ルートのしくみ

充電式バッテリーは家庭ごみではなく、店頭や役所の専用ボックスで別に集めるのが前提です。
理由は二つで、
- 第一に安全
- 収集車や処理施設での発火を避けるため
- 第二に資源循環
- 中のニッケル、コバルト、リチウムなどを次の製品へ生かすため
このページでは、なぜ分けるのか、ボックスに入れた“その後”に何が起きるのかを、制度と処理フローの視点でやさしくまとめます。
具体の出し方(端子の絶縁や持ち込み先など)は、品目別の「捨てかた」記事をご覧ください。
なお、ボックスに入れられるのは電池そのもので、スマホなど製品本体は別ルートになります。



はじめに:対象の整理
電池といっても、種類ごとに危険性や回収の窓口が違います。
読みながら迷わないように、このページの守備範囲を最初にハッキリさせておきます(詳しい理由は後半の「なぜ対象を限定するの?」にまとめています)。
このページで対象とするバッテリー
まず、このページが対象とするのは次のとおりです。
- 充電して繰り返し使える小型の電池の電池単体
- (例:ニッケル水素/リチウムイオン/ニカド/小型シール鉛)
- 製品から取り外した小型の充電式バッテリー(外せる場合)
対象外のバッテリ
いっぽう、ここでは扱わない(別ルートに回す)ものは次のとおりです。
- 乾電池(アルカリ・マンガン・亜鉛など)
- 自治体の乾電池回収・販売店の回収へ(→[乾電池の捨てかた])
- ボタン電池・コイン電池(多くは充電しない一次電池)
- 店頭のボタン電池回収缶など専用回収へ(→[乾電池の捨てかた])
- 一次リチウム電池(CR型など)
- 乾電池/ボタン電池の回収ルート側へ(→[乾電池の捨てかた])
- 大型のバッテリー(電動アシスト自転車・EV など)
- →購入店・メーカーの専用窓口
- 自動車用鉛バッテリー
- カー用品店・整備工場の引き取り
- 破損・膨張・液漏れした電池
- 標準ボックス対象外(自治体窓口や購入店に相談)

なぜ対象を限定するの?
ややこしいのには理由があります
電池といっても中身・危険性・回収の仕組みがそれぞれ違います。
混ぜてしまうと、
- 安全面:
- 充電式はエネルギーをため込む性質があり、圧縮・破砕で発熱や発火のリスクが高まります。
- 乾電池やボタン電池とは事故パターンが異なります。
- 資源面:
- 取り出したい金属や処理プロセスがまったく別。
- 混ざると選別が難しくなり、資源として戻る割合(歩留まり)が下がることがあります。
- 制度面:
- 充電式はメーカーが回収まで責任を持つ専用スキーム(電池リサイクル協会)で運ばれます。
- 一方で乾電池やボタン電池、大型バッテリーは別のルートが用意されています。
- 状態の違い:
- 膨張・破損・液漏れなどの電池は、標準ボックスでは扱えません。
- 安全に運ぶための特別な手当てが必要になるためです。
見分けのヒント:リサイクルマーク
捨てる際はまずはラベルを見ましょう。
対象の小型充電式電池には、種類を示すLi‑ion/Ni‑MH/Ni‑Cd/Pbといった表記や、リサイクルのマークが付いていることが多いです。
通常は電池のラベル面やパック裏面にありますが、内蔵タイプは本体カバーの内側や取扱説明書に記されている場合も。
こうした表記が見つかったら、対象のバッテリ(電池そのもの)の可能性が高いと考えてOKです。
バッテリ回収のルール解説:なぜ“専用ルート”?
この専用ルートは、国のルール(資源有効利用促進法=“つくった会社が回収まで責任を持つ”考え方)に基づいています。
目的はシンプルに二つ
- 安全の確保
- 一般ごみ工程での発火を避ける
- 資源の循環
- 電池の中の金属を次の製品へ戻す
仕組みの役割分担はこうです。
電池メーカーなどが参加する共同体制(電池リサイクル協会=JBRC)が、回収から資源化までを担います。
自治体や店舗は、市民の受け口として回収ボックスを設置・周知し、集まった電池を体制へ渡します。
回収ボックスに入れた“その後”
回収ボックスの中に入った電池は、安全に集める → 選り分ける → 資源に戻すという順番で進みます。
お店や自治体の拠点で一時保管しまとめて回収。
回収は電池だけ。乾電池や製品は入れません。
種類(ニッケル水素・リチウムイオンなど)や状態を確認。
膨らんだ電池・壊れた電池・液漏れなどは対象外です。
専用の設備で金属を取り出します。
ニッケルやコバルト、リチウムなどが次の電池材料や金属製品に生まれ変わります。
この“選り分け”がきれいに進むほど、回収の効率と安全が上がり資源として戻る割合も増えます。
異物が少ないほど“いい資源”になります。
家での分け方が、そのままリサイクルの質に跳ね返ります。

回収ボックスの制度と運用
「どこに置いてあるの?」は、制度上“誰が関わるか”とセットで決まります。
回収ボックスは、つくった会社の共同スキーム(電池リサイクル協会=JBRC)が、協力店や自治体拠点と組んで設置・運用する仕組みです。
どこに置かれてる?(制度と場所のつながり)
- 家電量販店・ホームセンター・自転車店=協力店:
- メーカーの回収スキームに参加登録した店舗。人が集まりやすく、店内スタッフが安全管理と案内を行えるため、受け口として機能します。
- 役所・資源循環関連施設=自治体拠点:
- 住民向けの案内と連携しやすく、自治体の広報と合わせて周知のハブになります。
- 地域事情に合わせて設置の有無・場所が決まります。
- そのほか:
- 一部のスーパーやドラッグストアが協力店化する例も。
- いずれも「生活動線に近い場所」に置くのが基本発想です。
誰がどんな役割?(役割の分担)
- 電池リサイクル協会(JBRC):
- 回収資材の提供、集荷の手配、集めた電池の資源化までを統括。
- 協力店(店舗):
- 受け入れ表示、電池だけの受け付け、安全な一時保管、集荷依頼。
- 自治体:
- 設置や周知、対象外ルート(小型家電・乾電池など)との案内連携。
- わたしたち(排出者):
- 対象を見分け、電池だけを持ち込み、端子が触れないようにして出す。
捨てに行った時のポイント
多くは店内の入口近く/サービスカウンター付近に、「電池専用」「充電式」「乾電池は入れないで」の表示がある箱が目印です。
満杯に見えるときは無理に入れず、スタッフにひと声か、別拠点・別日を利用しましょう。
仕組みの境界とグレーゾーン
ここでは、なぜ境界を引くのか理由だけを押さえます(具体の対象一覧は「このページの対象」を参照)。
- 安全の理由:
- 膨張・破損・液漏れの電池は、一般のボックスだと発火リスクが上がるため、標準ルートから外す必要があります。
- 処理の理由:
- 製品本体は分解・データ消去など別の工程が必要。だから電池単体の箱には入れません。
- 規模の理由:
- 自転車やEVの大きな電池は、輸送・保管の安全要件が異なるため、販売店・メーカーの専用ルートになります。
ルールを守らないとどうなる?(火災のリスク)
バッテリの処理を誤ると処理の過程で“火災事故”のリスクが高まります。
混入が少量でも、圧縮・衝撃・摩擦などの条件がそろうと一気に広がります。
ここでは、現場で実際に何が起こりうるのかを工程順に短く整理します。
工程ごとの火災リスク
- 収集車の圧縮で端子同士や金属と触れて短絡。局所的に発熱し、周囲の可燃物(紙・プラ)に着火。
- 車内で煙が出ると積み下ろし・散水・通報などの対応が必要になり、収集が止まります。
- ベルト搬送や破砕の衝撃で電池が潰れて短絡。火花からライン上の可燃物に延焼し、設備停止。
- スプリンクラー等の消火で濡れた廃棄物は再処理が必要になり、コストと時間が嵩みます。
- 投入待ちのラインや炉前で発煙・発火が発生すると、安全確認→停止→復旧の一連の措置が必要。
- 地域の搬入に大きな影響が出ます。
よくある誤解
- 「少量なら大丈夫」→ 条件がそろえば1個でも火種になります。
- 「使い切ったから安心」→ 残量ゼロでも短絡は起こり得るため危険。
- 「膨らんでない=安全」→ 外観が正常でも、圧力や衝撃で発火するケースがあります。
小さな火種が設備の停止や地域全体の遅れにつながることがあります。
だからこそ、最初から混ぜない(=別回収)が最大の予防策です。

まとめ:迷ったときは
最後に、迷ったときの指さし確認を置いておきます。
- 小型の充電できる電池だけ → このページの回収ボックスへ。
- 製品ごと(スマホ・電動歯ブラシ本体など) → 小型家電の回収へ。
- 大きい/動力用(自転車・車など) → 購入店・メーカーの専用窓口へ。
- 壊れている/膨らんでいる → 自治体や購入店に相談(標準ボックス対象外)。
チェック:電池だけ?/小型?/無事? の3つ。合わなければ、サイト内の各「捨てかた」記事で正しいルートへご案内します。
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出典リスト
本文の根拠となる一次情報は、ここにまとめて記載します。必要に応じて該当箇所をご確認ください。
- 経済産業省:小型二次電池のリサイクル(制度・仕組み)
- JBRC:協力店検索/Q&A(対象・対象外・排出時の注意)
- 環境省:リチウム蓄電池等処理困難物対策集(概要版・本編)