【MRNの向こう側】他社の古い携帯も回収できる!スマホ再資源化のしくみ
使わなくなったスマートフォンや携帯電話を、何年も引き出しに入れたままにしていないでしょうか。
自治体のごみに出すのか、購入した店へ返すのか。
それとも、ずっと手元に置いておくしかないのか。
処分方法がわからないまま保管している人も少なくありません。
実は、古い携帯電話やスマートフォンは、全国の携帯電話ショップなどで回収されています。
しかも、現在契約している会社の端末だけではありません。
ドコモのショップへ他社の古い携帯電話を持ち込むなど、購入した会社やメーカーが異なる端末も回収対象になります。
電池や充電器も受け付けています。
携帯電話ショップと聞くと、新しい端末を買ったり、料金プランを変更したりする場所という印象が強いかもしれません。
そこが使用済み端末の回収拠点でもあることは、あまり知られていません。
なぜ、競合する携帯電話会社同士で、他社の端末まで回収できるのでしょうか。
その背景にあるのが、携帯電話業界が共同で築いてきた「モバイル・リサイクル・ネットワーク(MRN)」です。
MRNは、利用者が普段からその名前を意識して使うサービスではありません。
ショップの回収カウンターの向こう側で、端末を安全に受け取り、個人情報を守り、資源へ戻す流れを支えている仕組みです。
この記事では、MRNが生まれた理由から、店頭へ渡したスマートフォンがその後どのように管理・処理されるのかまで、順を追って見ていきます。
▶︎スマホ処分の具体的な方法はこちらの記事で整理しています。

モバイル・リサイクル・ネットワーク(MRN)とは
モバイル・リサイクル・ネットワークは、携帯電話事業者と業界団体を中心に、2001年から続けられている回収・再資源化の仕組みです。
MRNが始まる以前は、通信事業者が自社で販売した携帯電話を、それぞれ回収する形が中心でした。
しかし、それでは携帯電話会社を乗り換えた人や、どこで購入したかわからない古い端末にとって、回収の入口がわかりにくくなります。
そこで、利用者が契約先やメーカーを細かく気にせず、使用済み端末を持ち込める共通の入口がつくられました。
現在は大手の携帯電話事業者だけでなく、販売会社や業界団体もMRNに参加しています。
- 通信事業者:NTTドコモ、KDDI・沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイル
- 販売会社:エディオン
- 業界団体:電気通信事業者協会、情報通信ネットワーク産業協会
携帯電話会社同士は、料金やサービス、販売する端末をめぐって競争しています。
それでも使用済み端末の回収では、会社の境界を越えて協力する仕組みがつくられています。
他社の端末を受け取ってもらえるのは、ショップが個別に厚意で対応しているからではありません。
携帯電話業界全体で、契約先やメーカーを問わず回収できる入口を用意しているからです。
他社の古い携帯を回収できるのは、ショップの厚意ではなく、業界横断の回収ルールがあるからです。
すべての端末が同じ工場へ行くわけではない
MRNという名前から、回収された端末がすべて一つの施設へ集められるように思えるかもしれません。
しかし、MRNは一つの回収会社や処理工場の名称ではありません。
メーカーやブランドを問わず受け入れる考え方や、個人情報を守るための管理、安全に再資源化するための基準を共有する枠組みです。
実際の保管、運搬、再資源化は、それぞれの参加事業者が管理するルートで行われます。
古い携帯、電池、充電器も回収対象
MRNの基本的な回収対象は、次の3種類です。
| 回収対象 | 主な例 |
|---|---|
| 本体 | スマートフォン、フィーチャーフォン、PHSなど |
| 電池 | 携帯電話用の電池パック |
| 充電器 | ACアダプター、卓上ホルダーなど |
機種変更や新規契約をするタイミングでなくても、家庭に以前から保管していた端末を持ち込めます。
今使っているスマホと一緒に契約したものではなくても、昔のフィーチャーフォンや、すでに解約した端末を持ち込めます。
一方、タブレット、スマートウォッチ、イヤホン、ケース、USBケーブルなどの扱いは、事業者や店舗によって異なります。
「スマホと一緒に使っていたものなら、何でも回収対象になる」というわけではありません。
充電器、ケーブル、モバイルバッテリーは分けて考える
コンセントへ挿すACアダプターなどの充電器と、USBケーブルは別の品目です。
また、スマホを外出先で充電するモバイルバッテリーには充電式電池が入っているため、充電器やケーブルと同じ感覚では処分できません。
▶︎スマホと一緒に出てきがちなものの捨てかたはこちら


膨張・破損した電池は先に相談する
電池が膨らんでいる、変形している、液漏れしている、異常に熱くなるといった場合は、通常とは異なる対応になる可能性があります。
電池内蔵型のスマートフォンを、家庭でこじ開ける必要はありません。
無理に分解したり、通常の回収ボックスへ入れたりせず、携帯電話会社や自治体へ状態を伝え、持ち込み方法を確認してください。
店頭へ持ち込んだスマホはどうなる?
MRNの回収から再資源化までを簡単にすると、次のような流れです。
家庭
→ MRN参加店で対面回収
→ データ漏えい防止措置
→ 施錠保管・管理
→ 再資源化事業者へ引き渡し
→ 分解・破砕・選別
→ 金属やプラスチックを資源化
1.店頭で対面回収する
スマートフォンには、電話帳、写真、メール、SNS、決済情報などが保存されています。
そのためMRNでは、誰でも自由に投入できる回収箱ではなく、店頭で一台ずつ受け取る方法を基本としています。
利用者への確認、端末の初期化、受け取り後の保管は、個別に管理されます。
- 対面回収を原則
- 利用者自身によるオールリセットの実施の確認
- 施錠可能な収納庫等に管理し、持ち出し等を防止
このように、MRNでは利用者による初期化だけに頼っているわけではありません。
対応できる端末には穿孔などの処理を行い、その場で処理できない端末は施錠できる場所で管理します。
ただし、端末の構造によって処理方法は異なります。
電池を取り外せないスマートフォンなどでは、安全上の理由から店頭で穴を開けない場合もあります。
「あとで処理されるから、データを消さなくてもよい」という意味でもありません。
回収先の対策とは別に、利用者側でも必要なデータを移し、端末を初期化しておくのが基本です。
2.管理されたルートで再資源化事業者へ渡す
回収された端末は、参加事業者が委託する中間処理・再資源化事業者へ引き渡されます。
MRNのガイドラインでは、国内で確実かつ安全に再資源化することを委託契約に定めています。
委託事業者から受入台数、重量、再資源化率などの報告を受け、作業現場を確認するなど、回収後の工程も管理します。
ショップで受け取って終わりではありません。
端末が再資源化の工程へ届くところまで含めて、MRNの仕組みです。
3.分解・破砕して素材を分ける
再資源化施設へ運ばれたスマートフォンや携帯電話は、手作業で分解したり、細かく破砕したりして、素材ごとに分けられます。
携帯電話には、鉄やアルミニウムのほか、金、銀、銅、パラジウムなどが含まれています。
古い携帯電話は、端末の形のまま次の人へ渡らなくても、素材の単位まで戻すことで、別の製品をつくる資源になります。
金属だけでなく、プラスチックやガラスも、それぞれに適した方法で再資源化されます。
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2025年度はどれくらい回収された?
MRNは、名前こそ広く知られていませんが、実際には非常に大きな規模で利用されています。
TCAが公表している2025年度(令和7年度)の回収実績を見てみましょう。
本体だけで約318.7万台。電池は約342万個、充電器は約97.4万個にあたります。
一つのショップで見れば、持ち込まれるのは数台ずつかもしれません。
しかし、それが全国から集まることで、大きな資源の流れになります。
一方で、家庭には今も多くの端末が保管されています。
「残しておきたいデータがある」「個人情報が心配」「どこへ持っていけばよいかわからない」といった理由から、手放せないままになっているケースもあります。
回収場所だけでなく、データがどう守られ、回収後に何が起きるのかを伝えることも、MRNの利用につなげるうえで重要です。
MRNの回収と下取りは何が違う?
MRNによる回収と、携帯電話会社や買取店の下取りは、端末を渡す目的が異なります。
| 下取り・買取 | MRNによる回収 |
| 端末を製品として査定する | 使用済み端末を無償回収する |
| 中古端末として再利用する場合がある | 素材として再資源化する |
| 金銭やポイントの対象になる場合がある | 査定やポイント付与は基本的にない |
| 製品としての価値をつなぐ | 素材としての価値をつなぐ |
まだ安全に使える端末なら、売却や下取り、家族への譲渡なども選択肢になります。
古すぎて値段がつかない端末や、故障・劣化によって製品としての再利用が難しい端末には、MRNが有力な出口になります。
▶︎まだ使えるスマホは、売るという選択もあります

売ることと回収に出すことの、どちらか一方だけが正解というわけではありません。
下取りは、製品として次へ。
MRNは、素材として次へ。
端末の状態や、自分が手放すためにかけられる手間に合わせて選べば大丈夫です。
店頭へ持ち込む前にしておきたいこと
一度回収された端末は、原則として返却してもらえません。
店舗へ持ち込む前に、次の項目を確認します。
- 必要な写真、連絡先、ファイルをバックアップする
- 新しい端末へのデータ移行を済ませる
- Apple AccountやGoogleアカウントなどを確認する
- 「探す」などの端末ロック機能を解除する
- 電子マネーや交通系ICの移行・解除手続きをする
- スマホ用電子証明書を利用している場合は必要な手続きをする
- SIMカードとメモリーカードを取り外す
- 端末を初期化する
- 補償や端末返却プログラムの契約状況を確認する
初期化すると、元に戻せないデータもあります。
先に残したい写真や情報がないかを確認してください。
電源が入らないなど、自分で初期化できない場合は、無理に操作や分解をせず、端末の状態を回収先へ伝えて対応を確認しましょう。
スマホを家庭ごみに混ぜないことも大切
スマートフォンには、リチウムイオン電池が内蔵されています。
収集車や処理施設でほかのごみと一緒に圧縮・破砕されると、発熱や発火につながるおそれがあります。
そのため、スマホを自己判断で可燃ごみや不燃ごみに混ぜるのは避け、MRN参加店や自治体が案内する回収方法を確認することが大切です。
MRNへ渡すことには、希少金属を資源へ戻すだけでなく、電池を通常のごみ処理ルートへ混入させないという意味もあります。
家庭での出し方は、その後の安全と資源循環の両方につながっています。
▶︎バッテリ回収の仕組みについてはこちらで詳しく整理しています。

よくある疑問
購入した携帯電話会社のショップへ持っていく必要はある?
MRN参加店では、携帯電話会社やメーカーを問わず回収するのが基本です。
購入した店がわからない古い端末でも回収対象になります。
ただし、店舗の種類や端末の状態によって対応が異なる可能性があるため、持ち込む店舗へ事前に確認すると確実です。
機種変更や契約の手続きがなくても回収してもらえる?
機種変更や新規契約のときでなくても持ち込めます。
以前から家庭に保管していた古い機種も対象です。
故障している端末も回収してもらえる?
故障端末を回収している事業者もあります。
ただし、著しい破損、膨張、液漏れなどがある場合は安全上の対応が異なるため、事前に店舗へ相談してください。
回収後に端末を返してもらえる?
再資源化するため、回収後は原則として返却されません。
必要なデータ、SIMカード、メモリーカードなどが残っていないか、手放す前に確認してください。
充電ケーブルやケースも一緒に回収してもらえる?
MRNが基本的な対象として案内しているのは、本体、電池、充電器です。
ケーブル、ケース、イヤホンなどの扱いは、店舗や事業者によって異なります。
まとめ|他社端末を受け取れるのは、共通の出口があるから
キャリアショップが他社の古い携帯電話まで回収できる背景には、モバイル・リサイクル・ネットワークという業界横断の仕組みがあります。
契約先やメーカーが違っても回収できる入口をつくり、個人情報の漏えいを防ぎながら、管理された再資源化事業者へ引き渡す。
その先では端末を分解・破砕・選別し、金属やプラスチックを再び資源へ戻しています。
家庭側でできるのは、必要なデータを移し、端末を初期化し、安全な状態で回収先へ渡すところまでです。
まだ使えるスマホなら、売る、譲る、下取りに出すという選択肢もあります。製品として使い続けることが難しくなったら、MRNによって素材の流れへつなぐことができます。
古いスマホを引き出しから出すことは、単なる片づけではありません。
止まっていたモノの流れを、もう一度動かす行動でもあります。
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